技術書典#16向けに 「The Cloud Run (Google Cloudコンテナ設計本)」を執筆しました
はじめに
お久しぶりです。iselegantです。 今日は技術書典#16向けに執筆した「The Cloud Run」本の紹介をさせてください。 今回のテーマは「Google Cloud」です! 特に、コンテナサービスとして代表的な「Cloud Run」のアーキテクチャ設計をテーマに執筆しました。
これまで、「クラウドネイティブシリーズ」と称して3冊執筆してきましたが、その第4弾の位置付けになります。 いつもであれば、わりとゆるくかわいい感じの表紙でしたが、今回は「ちょっと本気でCloud Runに向きあって、読者のみなさまに価値を届けようか」とのコンセプトなので、本気度を表現するためにシリアスな表紙を作成いただきました。
今回の書籍のコンセプト
僕たちが今回の書籍を執筆する際、2つのコンセプトを大切にしています。
- 実務に通用する学びを届ける
- とにかく楽しく学ぶ
それぞれ簡単にお話させていただきます。
実務に通用する学びを届ける
僕も馬勝さんもあまり手を抜くのが好きじゃない性格からかもしれませんが、「どうせ伝えるなら本気で。」を毎回大切にしています。 ただなんとなくGoogle CloudやCloud Runを学べる書籍ではなく、読者のみなさんが業務で使える技術に昇華するお手伝いをしたいとの思いから、割と本格的なクラウド設計の考え方を散りばめました。
さらに、都合により名前は伏せますが、本書はGoogle Cloud技術に精通した方に一部レビューをしていただきました。 筆者では気付けなかった技術仕様や表現の細部に至るまで、忖度なく多くのコメントをいただきました。(本ブログにおいても感謝の意を表します)
とにかく楽しく学ぶ
技術の学びを継続するうえでは、「あ、これ動いた!」とか「こんな仕組みなんだ!」のような、驚きや発見、そして自分でものを動かせたという小さな成功体験を積み上げが大切だと思っています。 このような背景から、本書でもステップバイステップによるハンズオンを用意しました。
また、「今回は今までと違って、没入感みたいなものを特に提供したいよね」と馬勝さん話していおり、teachmeと呼ばれる仕組みをフル活用しています。(teachmeに関しては、後ほどご紹介します)
目次
目次は次の通りです。 Cloud Runでワークロードを組む場合に必要なことは大体網羅するようにしました。
書籍の紹介
本の構成
今回は全6章で構成しています。僕は主に「3章と4章」を担当しました。 実際の書籍の内容を一部参照しながら、ご紹介したいと思います。
1章では、Cloud Runの概要について触れていきます。 AWSにおける類似サービスと比較した際の優位性や、Cloud Runが活用できるユースケースを簡単に紹介します。
2章では、Cloud Runのミニハンズオンを用意しました。 クラウド技術の良さの一つは、自分の手元で動かしてサービスの特徴をつかめる点です。 Cloud Runサービスのハンズオンを通して、Google Cloud上でコンテナ技術がいかに早く、そして簡単に利用できるということを体験します。
3章では、Cloud Runによる全体的なシステムデザインの方法を学びます。 Google Cloudアーキテクチャフレームワークをベースにしつつ、Google Cloud上のさまざまなサービスとCloud Runのつなぎ方を理解します。 3章を通じて、Cloud RunがGoogle Cloudの中でどのような位置づけとなるか理解できるはずです。
4章では、Cloud Runを利用したプロダクションレディな設計を学びます。 本書のメイントピックであり、運用やセキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コスト最適化といった様々な非機能観点からCloud Runによるアーキテクチャデザインをマスターしていきます。
5章では、1章から4章までの内容を踏まえた本格ハンズオンを用意しています。 本書のもう一つのメイントピックである、「teachmeによるハンズオン」を用意しました。(馬勝さんが頑張って作ってくれたので、ぜひ↓の動画をみてください。ただスマホだと見にくいかも) Google CloudのWebコンソール自体にハンズオン内容が埋め込まれる形で画面右側に登場します。GUIで操作が必要な箇所は対象の場所にスポットライトがあたったり、Cloud Shellで入力が必要なコマンドはそのままハンズオンから入力できます。このような、インタラクティブなチュートリアルにより、ステップ・バイ・ステップで没入感を意識したGoogle Cloudハンズオンが体験できます。
6章では、5章で構築したCloud Runの基本的なアーキテクチャに対して、4章で学んだプロダクションレベルの要素をの一部をハンズオンで実施していきます。 中には少し難易度の高いハンズオンも用意しており、中級者のエンジニアにも楽しんで学べる内容になっています。
本の著者
今回の本は、これまでの全シリーズ、そして僕たちの代表作である「コンテナ設計・構築[本格]入門」にて共著をともにした馬勝さん(@HorseVictory)との共著です。
書籍の特徴
今回もわかりやすさ重視でとにかく図をたくさん作成しており、構成図をはじめとした130以上の図で解説しています。
また、ページ数は208ページあります。
実は、ハンズオン分も含めると350ページ相当のハイボリュームな本になっています。
※ハンズオンに関してはGitHubにて公開予定であり、teachmeをベースに実施できるようになっています
前回同様、技術書典向けとしてはかなりぶ厚めなので、割と読み応えがあるかと思います。 ただ、これ一冊でCloud Run中心としたアーキテクチャデザインに必要な要素を一通り学べるはずです。
対象の読者
本書は、次のような読者の方々を想定しています。
- コンテナ技術が好きなエンジニアの方
- Google Cloudが好きなエンジニアの方
- 本番環境向けCloud Runの設計・運用について学びたい方
- AWSコンテナ設計・構築[本格]入門(SBクリエイティブ, 2021)を読んで、Google Cloudも学んでみたい方
- Google Cloudのハンズオンを通して技術力を高めたい方
- アライとウマカツ本シリーズが好きな方
冒頭のコンセプトで述べた通り、クラウドに興味あるエンジニアであれば楽しめる本になっていると思います。 ただ、Google CloudやAWSを何も知らない状態だと、少し厳しいかもしれません(という意味では、ビギナー向けの本ではありません)。
技術書典#16に関して
5/26(日)に池袋・サンシャインシティ展示ホールDにて開催されるオフラインイベントに出店予定です。
「き13」で頒布しているので、ぜひ遊びにきてください。
ところで、なぜCloud Run?
これまでの技術書典の出版に関して、僕たちはクラウドネイティブをテーマとして執筆してきました。 共著者である馬勝さんと私はAWSに関する業務経験のほうが長く、なにかナレッジや経験を伝えるのであれば、どちらかといえばAWSのほうが得意だったりします。 ※もちろん、Google Cloudに関しても業務経験はあり、その経験をもとに今回執筆しています
ただ、クラウドベンダーに好みが傾倒しているわけではありません。 自分達のエンジニアリングに対する体験が優れていたり、仕事や自分達の環境に今後活かしていける技術であれば、その技術の良さをわかりやすく楽しく伝えたい、というのが執筆において大事にしている一つのポイントです。 ※もちろんAWSにはAWSの良さがあります
拙書ながら、2021年に技術商業誌「AWSコンテナ設計・構築[本格]入門」(SBクリエイティブ、https://www.sbcr.jp/product/4815607654/) を世に送り出しました。 大変ありがたいことに、多くのAWSエンジニアやクラウドエンジニアを目指している方々から大変多くの反響をいただきました。 これは、AWSにおけるコンテナ技術が多くのサービスを支えており、「自分たちのビジネスやプロダクトをさらに発展させるために求められている技術」であることを示しています。
昨今では、AWSに限らず、自分たちのビジネス用途に合わせてさまざまなクラウド技術を選択するケースが増えています。 事業やプロダクト開発ごとに技術選定が委ねられることが多く、Google Cloudを利用したサービスやマルチクラウドの事例もよく聞きます。 また、クラウドが提供するサービスのバリエーションや抽象度も豊富になっています。 クラウド利用のコモディティ化が進む中で、AWSのみならず他の領域も上手に学び続けることが、クラウドエンジニアとしてのプレゼンスを発揮する鍵だと考えています。
AWSで学び、構築し、運用した経験は他のクラウドを学ぶ際にも大いに役立ちます。 そのため、AWSエンジニアにこそ、これまでの経験やメンタルモデルを活かしながらGoogle Cloudも学び、エンジニアとして成長しつつ、サービスやプロダクトの発展に貢献してほしいと考えています。 そこで、著者らが大好きな技術であるコンテナを切り口に、Cloud Runの本格ガイドを執筆するに至りました。
さいごに
さいごまで読んでいただきありがとうございます。
4月中旬から執筆に本腰を入れ始めて、1ヶ月と少しでやっと書き上げることができました。 業務後に毎日深夜、土日も多くの時間を割いて書いてきたので中々大変でしたが、彼との執筆は毎度ながらとてもエキサイティングであり、たくさんディスカッションしながら執筆を進めることができました。 そのおかげもあり、今回もとても満足のいく内容になったかと自負しています。 また、執筆する中で僕たちも膨大なドキュメントや仕様を理解するプロセスを踏んだので、個人的にも大変勉強になりました。
技術書典#16が開始される5/25(土)から頒布予定ですが、少しでも興味をもっていただけたら、ぜひお手にとっていただけると嬉しいです。 また、5/26(日)に現地にお越しになられる方は、お気軽にお声掛けいただけると嬉しいです!
ではまた。